「同級生交歓」



5月の中頃のことだったと思う。留守中に高校の時の同級生から電話があった。
同窓会のことらしい、と父がいう。
同窓会? クラス会のことだろうか。
それとも100年以上の歴史を誇る「城北会」という同窓会のことだろうか。
クラス会なら去年の春やったばかりだし。
同窓会なら、100年以上も歴史ある同窓会が、卒業生にいちいち出欠確認の連絡をするわけないし。
もしかしたら、同窓会名簿を買えというのか。あんまり買いたくないなあ。高いし、使い道わかんないし。
アッ、ひょっとしたら会費を滞納してたかな。

聞いていた連絡先にさっそく電話してみる。
数回掛けてみたが、昼間も夜も、誰も出ない。 
今どき留守番電話にもならないなんて、どういうところなんだ?と思いつつ、何度か掛けているうちにやっと通じる。
女性の声で、
「****研究センターでございます」
「Yさんはいらっしゃいますか?」
とたずねると、
「本日は大学には来ておりません。明日は参ります」
えーっ?!?!?! 私はどこに電話したんだろう。
大学? 研究室? そんな知りあいいたっけ?
そんなこんなで、いざご本人と話してみると、
「文芸春秋」の「同級生交歓」の写真を撮るから、6月16日13時30分に高校の校門前に集合だという。
他のメンバーは、あの人この人全部で7人(詳しくは雑誌「文芸春秋」7月10日発売を見て下さいね)。
そんな大変なメンバーに私も入れてくれるんだと、びっくり&感激。
だって、私は高校の卒業生の中では、かなり変わった方面に生きてる方だと思っていたから。
それに、メンバーは特に卒業時の同クラスでもないし・・・。
とにもかくかくにも、みんなに会えるのが楽しみで、会う人ごとに、
「今度ね、文芸春秋のね・・・」と話しまくる、話しまくる。
私って、こんなに自慢屋? と自分で自分がいやになるくらいだった。

そして、待ちに待った6月16日。
まるで、小学生の時の遠足か運動会の日のように、わくわくしながら迎えた当日である。
自分がこんなにミーハーだったとは、ちょっとショック!!! でも、楽しみっ。
みんなどういう様子になっているんだろう。会ってすぐわかるかな。

3年間通った懐かしい校門の前に到着する。
隣の、学習院女子部も変わってない。
私の母校の門をくぐって校舎へ向う桜並木もうっそうと茂っている。
去年のクラス会の時に、この並木が無くなるって聞いてたけど、あるうちに見られてよかったあー!
ああ、今日は学校は休みじゃないんだ。
おっ、講堂兼体育館が昔のまんまだ。
あそこで、憧れの先輩が剣道の試合をやってたっけ。
ほの暗い体育館の奥から、聞こえてくる「バシッ、バシッ」という竹刀の音。

凛々しい防具姿。そして、甘酸っぱい想い出と一緒に鼻をかすめる先輩たちの汗のにおい。
あれは、青春だったんだなあ! なんちゃって。
体育の時間に、倒立しようとして、マットから滑り落ちて、体育館中響き渡るような音をたてて、頭を打ったっけ。
ダンスの発表会したよな。
もちろん、入学式も、卒業式も・・・。
あれっ、テニスコートの場所が変わっちゃったんだ。昔はプールの横だったのに・・・。
そう、私は軟式テニス部だったんですよ。
わーい。かの有名な「ラジアン池」が、始めてみた日から変わってないよ。懐かしいなあ〜〜〜。
その向こうで、お昼休みにパン屋さんが牛乳とか焼きそばパンとか売ってたっけ。
鉄筋校舎もあのころのまんまじゃない。

校門から校舎への桜の並木道で、いったり来たりうろうろしていると、入口から見たような女性が歩いてくる。
「あれ、さより(これは私の本名。高校当時はもちろん本名だったので)? どうしたの? 何してるの?」
「わあ、あなたこそ、今日はなんでここへ?」
「うちの子供がここの生徒なの。今日はPTA」
「ええっ、親子二代?」
「そうなのよ。けっこう多いのよ」
てなわけで、思わぬご対面もあり、かなり興奮気味な私であ〜る。

やっと、予定メンバー7人が全員揃う。
おお、H君は1年の時に一緒だったよね。貫録ついたけど、変わってない変わってない。おとなしそうな感じなんだけど、けっこう隅に置けないんだよね。野球部だったよね。T大の野球部の監督してたことがあったよね。あの頃、話題になったね。かの大学が、史上初くらいに強くなった時機だったでしょ。
Y君。あ。失礼! Y教授! 一大ですか。おヒゲに惑わされてたけど、よく見たら、くりくりっとした円らな瞳とカールしたまつげが、あの頃と全然変わってなーい。タッチフットボール部じゃなかったっけ? ユニフォーム姿が目に浮かんできたよ!
え、H君もH教授なの? T大教授か。そうか、そうだよね。ただ野球部の監督にはならないか。
みんな偉いんだ。やんなっちゃうよなあー。
N君も教授? H君と同じ大学なの? え?、もとテニス部? 私のこと憶えてないのね。ううっ、さびしいっっ!!! でも、私も記憶が・・・。おあいこだね。
T君は東京高裁の判事だって。ええっっっ、こんなところで、一般人と話してて大丈夫?
「アッタリマエじゃん。いいに決まってるよ。ところでさ、俺さ、むかしさ、遅刻してきたらさ、君がやっぱり遅刻してきてさ、君に屋上へ行こうよって誘われたんだよ」
ええっっっっ!!!!! ほんと?!?1 ゴメン、私憶えてない!(全員大受け) 
でも、言われて見るとそんな事があったような気がしてくる。
なんていい加減な私!!!!!! 私はその時何をしたかったのかな? 
共に青春を語りたかったのか、はたまた一緒にゴミ拾いしようって誘おうと思ったのか、はるか彼方の想い出です。
T君も野球部なんだ!
Hさんは、言語聴覚士というお仕事で、学会での研究発表もこなし、ベースの診療所、そして日本全国飛び回って活躍してる。カッコイイ。
エッ! ご主人が高校の先輩? つまり同窓生? いいな。
私も今から探そうかな、同窓生。
Tさん。マガジンハウスという大出版社で、女性の編集長として、歴史ある「anan」をこれからまた新たに一新しようという意欲満々。スッゴイネ。Tさんはバレーボール部だったね。
いやいやいや。こんなみんなに囲まれて、私はどうしましょう。私以外はみんな優秀なんだもん。
でも、個性的で素敵な友人達がめじろ押しって、幸せなことですよね。

大騒ぎの合間に撮影といった感じで、無事終了。
かつて自分たちが走り回ったグランドや体育館、テニスコートをうっとりと懐かしげ眺める我々を、土曜の午後で、クラブ活動にいそしむ現役の高校生達がこのおじさんおばさんたち、ちょっと邪魔なんだけどな。
何見てんだか。といいたげに横目で眺めて校外へのランニングへ出掛けていく。
あ、きっと箱根山へ行くんだね。
私たちも行ったよね。先輩だぞ!!
などと、心の中で叫びつつ、ハイヒールのかかとがグランドの土に埋まってしまうのもいとわず、飽きもせず後輩達を見詰めているのであった。
この桜並木も校舎もグランドも、建て直しで今年限りで無くなっちゃうというのだから、無理もないか。

さってと、二次会二次会。
さっきから保護者のようについていた二人も加わって、楽しい二次会へと繰り出す。
まだ午後2時前なのにね。でも土曜日だからいいか。
和風のファミレスの一番奥の席に陣取って、さっそくの乾杯のあと、Y君はもう「同級生交歓」の文章を書き始める。
注文した料理が、全部揃うまでに書き上がって、みんなの「手厳しい」というか「勝手な」校正大会が始まった。
「ここは、駄目だよ!!!カット!!」
「だいじょうぶだよ」
「いやあ、まずいよ」
「じゃ、これくらいなら?」
「うーん、こうしよう」
「こっちは、このまま活かそうぜ」
まあ、にぎやかなこと、にぎやかなこと。
その合間に、Tさんはあの頃誰と付き合っていたっけとか、まあどこでも同じ懐かしい甘酸っぱい話題が渦を巻く。
私なんかさ、雰囲気に誘われて、うっかり
「吉田さんは誰と付き合ってたっけ」
なんて言われて、
「私は片思い」
「え、だれだれ?」
と聞かれて、「R君」
と、うっかり言っちゃって・・・。
みんなに冷やかされて、あげくにさっきから保護者のようについていた野球部出身のH君(「トータル・ペイント・プランナー」会社社長をやってる)から、
「おれさ、彼から相談されたことあるんだよ。吉田から告白されたけど、俺、タイプじゃないんだよなって」
だって。やっぱりそうか。ううううっ!!
でも、平気だもんね。R君、今元気かな。頑張ってね。
Y君はいまなにしてんの?
きもの屋さん。えー、ほんと? 今度安くしてよ! Y君も野球部か。

生ビールも、日本酒もあり、料理もたらふく食べた3時間の大盛り上がりの末に、最後に私的「同級生交歓」の撮影である。
さァ、ではごきげんようかと思いきや、とんでもない。
T高校卒業生はイベントがお好きと見えて、まだなにかあるらしい。
別れがたい気分のままに、ズルズルと、昔の通学経路のバスで新宿方面へ・・・。
ついたところは、はるか昔に(おこられる。ごめんなさい)同じT高校を卒業した、つまり同窓生の人々が良く集まる新宿末広町のスナックである。
何と、その日は、都内某所で同窓会「城北会」の総会が行われていたらしい。
その帰りに、来年の監事が、来年の同窓会の相談で集まったというわけである。
私、監事?
良くわかんないけど、またさらに、そこには同級の友が数人。
おお、あなたは・・・。アレ、君は・・・。
懐かしさと嬉しさに誘われて、すっかりその気になり、なんだか知らないけど、
10年先輩のパワーあふれるおじさま、おばさまがたのおっしゃる、来年の「城北会」の日程に賛成し、一人で3,5人くらい誘うこと、といわれて「はーい」と返事をしてしまい、またまたビールを飲んでしまったのでした。
私って、ちっとも自主性が無いね!!!
あきれちゃう!!!!!

しかし、しかし、同窓生も、同級生も万歳。めちゃめちゃ楽しかったよ。

というわけで、7月10日発売の文藝春秋社刊「文芸春秋」の「同級生交歓」みてみてください。

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